平成19年版 松江市観光白書

 松江市の観光予算の続き。松江市が公開している観光白書と合わせて、観光予算の効果について検討してみる。
 
平成19年版 松江市観光白書
http://www.city.matsue.shimane.jp/kankou/h19_hakusyo/all.pdf
 
 観光白書に出てくる代表的な観光施設の客数は以下の通り。(P.6)

施設 客数 料金 備考
カラコロ工房 36万人 16のテナントからの賃料収入?
堀川めぐり 33万人 1,200円  
松江城 24万人 550円  
由志園 23万人 600円 (有)日本庭園の施設
島根県立美術館 23万人 300〜1,200円 島根県の施設
玉造温泉ゆ〜ゆ 22万人 600円  
堀川地ビール 20万人 一畑グループの施設
松江ウォーター・ヴィレッジ 19万人 現.松江イングリッシュガーデン
松江フォーゲルパーク 17万人 1,500円  
イクライン 17万人 200円 一日券500円
来待湯治村大森の湯 14万人 300円  
小泉八雲記念館 13万人 300円  
武家屋敷 11万人 300円  
島根原子力 7万人 中国電力の施設

 宿泊客数は195万人(内、外国人は2万人)とのことだから、日帰り客も考慮に入れると、観光客の嗜好は分散している感じがある。もっと言うと、松江市にはこれといった有料の観光資源がないってことなのか。あるいは、宿泊客数に観光以外の目的(ビジネスなど)が相当数含まれているので、このような結果になっているのか。
 思ったより多かったのが由志園(23万人)。松江城(24万人)と同程度とは素晴らしい。安来市にある足立美術館(コレクションだけでなく日本庭園が有名)との庭園の相乗効果があると思うが、こういった広域テーマ観光はとても重要かと。
 ただ、統計には出ないけど、宍道湖(夕日やシジミなど)、神社(熊野大社佐太神社美保神社神魂神社、八重垣神社など)、和菓子屋、出雲ソバなど、松江を代表する観光資源は他にもたくさんあることは確か。これって行政は「ハコモノ」しか観光資源として認識していないってことなのか?(ただ単に「ハコモノ」は客数をカウントしやすいだけかもしれないが)
 
 次に観光関係予算について見てみる。
 平成19年度一般会計総額899億円のうち、観光関係予算は17億8,457万円(1.98%)とのこと。[観光関係(観光振興部)当初予算額(歳出)P.23]
 
 まずは観光費6億4,676万円の内訳。(「その他」は逆算した推測値)

大分類 小分類 算額 備考
観光イベント事業 鼕行列 151万円 観客数8万人
  水郷祭 1,757万円 観客数37万人
  松江武者行列 1,179万円 観客数15万人
  松江水燈路 1,500万円 観客数7万8千人
  その他 950万円  
観光イベント事業 小計 5,537万円
観光誘致宣伝事業 観光パンフレット等 1,187万円  
  広域観光推進 1,070万円  
  国際観光都市推進 301万円  
  観光振興支援負担金 775万円  
  出雲路トップブランド 774万円  
  神在月ツーデーウォーク 275万円 観客数995人
  文化観光月間事業費 394万円  
  松江市訪日団体旅行補助金 142万円  
  その他 695万円  
観光誘致宣伝事業 小計 5,616万円
観光客受入事業 大会団体受入 200万円  
  国際観光案内所 1,051万円  
  観光協会運営補助 8,146万円  
  コンベンション関係 1,477万円  
  イクラインバス運行補助 3,312万円 利用者数17万人(200円)
  観光客受入 922万円  
  佐陀川遊覧船調査事業費 100万円  
  まつえ暖談食フェスタ 700万円 観客数8万8千人
  その他 3,932万円  
観光客受入事業 小計 1億9,843万円
松江開府400年祭事業費 小泉八雲賞事業費 30万円  
  観光宣伝広告 1,523万円  
  全国民謡サミット・祭典 974万円  
  松江開府400年祭プロモーション 1,500万円  
  松江開府400年祭推進協議会 3,700万円  
  その他 1,458万円  
松江開府400年祭事業費 小計 9,186万円
観光関係一般 小計 3,778万円  
その他 小計 2億円前後?  
観光費 合計 6億4,676万円

 次に観光施設費11億3,780万円の内訳。

種別 算額 備考
松江市観光施設管理 1億5,453万円 内、松江城・城山公園維持管理9,138万円
観光施設整備 7,057万円 内、史跡松江城整備事業1,775万円
鹿島町観光施設管理運営費 577万円  
島根町観光施設管理運営費 4,095万円  
美保関町観光施設管理運営費 7,422万円  
八雲町観光施設管理運営費 2,828万円  
玉湯町観光施設管理運営費 2,555万円  
宍道町観光施設管理運営費 2,025万円  
松江ウォーター・ヴィレッジ管理運営 5億3,170万円 現.松江イングリッシュガーデン。利用者数19万人(無料)
松江フォーゲルパーク管理運営 1億6,035万円 利用者数17万人(1,500円)
その他 2,557万円  
観光施設費合計 11億3,780万円

 観光費6億4,676万円と観光施設費11億3,780万円の合計が、観光関係予算17億8,457万円なのだが、この中で突出しているのが松江ウォーター・ヴィレッジ(現.松江イングリッシュガーデン)管理運営5億3,170万円。これはいったい何なのだ? 規模縮小や閉鎖を検討し、他のことに予算を振り分けた方がいいのではないのか(平成20年からやっている可能性があるけど)。(追記:この件についてはL・C.ティファニー美術館閉館問題にて詳しく考察してみた)
 観光イベント事業では、費用対効果(予算額と観客数)を考えると、鼕行列151万円(観客数8万人)を松江武者行列|1,179万円(観客数15万人)や松江水燈路1,500万円(観客数7万8千人)並みにした方が効果が大きいと思う。全国的に見ても、鼕行列のようなインパクトの強い祭りは少ないと思うので、予算を大幅にアップして様々な工夫(神在月に合わせた話題作りや、観光客参加型にするなど)をすれば、水郷祭1,757万円(観客数37万人)を超えるポテンシャルを秘めていると思う。
 また、レイクラインバス(観客数17万人)は、運行補助に3,312万円が投入されており、思ったより金食い虫なのに驚いた。これだけではレイクラインの収支状況が分からないが、かなりの赤字事業である可能性が高いのではないか。利用客が1日あたり500人弱(=17万人÷365日)にとどまるのは少ないのではないか?
 
 と言うことで、レイクラインバスの収支状況について調べてみた。
 
松江市交通局:観光ループバス・レイクラインバス運行事業 平成18年事業評価表
http://www.matsue-bus.jp/jigyouhyouka/reikurain.htm
 
 平成18年と、データは少し古いが、事業費は5,470万円で、収益が2,904万円とのこと。また、運行便数は1万便、輸送人員は16.1万人とある。なお、事業費の中にバス取得費が入っているかどうかは不明。
 このデータから分かるのは、2,500万円の赤字(=2,904万円−5,470万円)と、1日あたりの赤字額が6万8千円(=年赤字2,500万円÷365日)で、1便あたりの赤字額が2,500円(=年赤字2,500万円÷1万便)、1便あたりの乗車人数が16人(=16.1万人÷1万便)ということ。
 よって、黒字化するには、乗車料金が1回200円なので1便あたり13人(=便赤字2,500円÷200円)の増加、もしくは1日乗車券(500円)ならば1日あたり136人(=日赤字6万8千円÷500円)の増加が必要ということになる。
 レイクラインの価値はお金には換算しづらいところがあるので、無理に黒字化しろとは言わない。ただ、利用者数が中途半端に少ないと思う。松江市の観光シンボルの一つにするのであれば、赤字幅が拡大してもいいから、少なくとも1日1,000人以上・年間40万人前後(欲を言えば1日3,000人で年間100万人以上)を目指してほしい。
 方策としては、コースを変える(二コースに分割)とか、内回り外回りを作るとか、値下げするとか、乗ること自体を目的とするような仕掛け(遊園地の乗り物等)をするとか、民間に業務委託するとか考えられる。
 
 おまけ、中海・宍道湖・大山圏域(松江市)のイメージについて。
 
中海・宍道湖・大山圏域イメージ アンケート調査 - 日本海新聞
http://www.nnn.co.jp/news/070711/20070711009.html
 
◇圏域全体のイメージ

  1. 水に恵まれた自然
  2. 山などの恵まれた自然景観
  3. 食べ物がおいしい

◇キーワード別調査

  1. 出雲大社
  2. シジミ
  3. 松葉ガニ
  4. 宍道湖
  5. 小泉八雲
  6. 松江城

 これらのイメージを各観光施設にうまくはめ込むことができれば、さらに集客力がアップするのでは。
 
 おまけ。
 
市政概要 松江 平成20年版:観光振興部
http://www.city.matsue.shimane.jp/jumin/gikai/pdf/h20_sisei-07.pdf
 
 P.68の「観光地別観光客入り込み延べ数」で、観光施設別のより詳細な客数を把握できる。